
ルイス・カーン。1901年、当時のロシア帝国のエストニア地方サーレマー島生まれで、両親はユダヤ人で、1906年にアメリカに移住してきました。
彼は、ミース、ライト、コルビュジエのいわゆる3大巨匠と世代は違うものの、美しく力強い造形美はしばしば最後の巨匠といわれています。
建築を学び始めたころは、ミースのファンズワース邸のような「これって家なの」というようなインパクトのある作品が“単純に”好きだったような気がします。
日本でいえば安藤さんの「住吉の長屋」のような作品ですね。
しかし、斬新な実験的住宅の衝撃に気を取られることなく、図面を読む力が少し付いてくると、図面を味わうことができるようになってきたようで、好きな作品群が徐々に変わってきて来ました。
中村好文さんの「住宅巡礼」という本に、カーンのエシェリックハウスが紹介されていています。
このエシェリックハウス、13mx9mの小さな住宅ですが、噛んでも噛んでも味の消えないスルメのような作品といったら失礼ですが、とても味わい深く、大変好きな作品です。
実物を見たことはないのですが、図面や写真を見て、すっかり頭の中にその家は存在しているほどです。
なにがそんなに良いのかというと、住宅のようでない外観でありながら、窓や仕上げの構成がとてもかっこいい。中の空間構成もシンプルで使いやすく、開放的でいい。などなどなど。
竣工が1961年ですから、かれこれ半世紀前の作品ですが、いまも珠玉の輝きを放っていることには間違いありません。
私も「これって家なの?」のような家ではなく「味わい深い家」の方を向いて設計していきたいと思っています。
≪ 写真はカーンによるエシェリックハウスのスケッチ ≫